おやまー、もう五月!
なんでもその時の情熱があるうちに書いてしまわないといけないですね。
子育て截金かーちゃんミキモト終わって直ぐ次のご依頼、
今はあるプロジェクトに関わっており、色々と毎日があっという間に過ぎて行きます。
このままミキモトのお話が終わっては偉い中途半端ですのでメインで飾られたトルソーの
お話しを今日は書いてから子育て截金かーちゃんに戻りたいと思います。

さて、
先ず私お話しが来た時に「トルソーってなんですか?」そこからの始まりでした。
所謂マネキンの上半身だそうです。あ~あれあれ、あれね。
会場のメインとなる場にトルソーを飾り、ミキモトのパールジュエリーを
飾りたいという内容でした。

トルソーに描いて欲しいモチーフはクローバーです。
それをお客様にお配りする広告と共通して描いて欲しい。

ク、クローバー!!!!
花びらがあるなら美しさを表現しやすいのですが、
葉だけ・・・。
心の中で悲鳴が鳴り響く。
冷や汗満開でした。

そして次にトルソー素材思案です。何の素材が良いですか?
布やツルツルしたマネキンのやつやと言われ、またガラスには
どうでしょうか?と。
そりゃあ私がして来た木製とは違う素材でカッコイイイメージが湧くの
でしたら是非今まで私がしてきた”木”とは違う素材でもさせて頂くのですが
どうもイメージが全く湧かない。

「やはり木で行きたい。」と申しました。
有難い事に木のトルソーでいけることになったのですが
おやま、トルソーは一から創るのだそうで、
何の木にしますか?とにかく時間がない、ミキモトに今すぐ
用意できる木があると言われたのですが、その木を使って
乾燥する百貨店で耐えることが出来るのか、また木目は
綺麗なのか完全に勉強不足、感覚で木と向き合ってきておりますので、
無知の私yes,noを応えることが出来ません。

木製の仏像展示などでも展示中に乾燥に耐えれなく
バキバキ!と音をたてて割れるのだ、と昔熱心に截金を
ご指導くださいました截金のお師匠様から聞いた話が蘇ります。

依頼を受け用意して頂いた板が搬入後バキバキに割れた経験もあります。
私が選ぶ木は通常古材のため海外に行っても割れたためしがありません。
あの時は地獄に落とされた気分でしたが”失敗は成功の基”
その経験を踏まえ新しい木の素材選びは慎重に厳選しなくてはいけないことを
学びました。

去年20年木を探し歩いて来た私に神様が与えてくれた出会い、
ミキモトを受けるほんの少し前に私の持つ木の世界の中で世界一じゃないかと
思う銘木師に出会っておりました。その方に聞いてみます。
お偉い方ですのにとても丁寧に助言して下さりました。
米ヒバが良いだろうと言われ、その話の時に昔バキバキに割れた私の
大作についてお話ししましたら「何の木?」と聞かれたので「桜」と
お応えしました。
「あかんに決まってる。」
0、0000001秒で
即アウトでした。そんなにも簡単に割れると分かる木で喜んで
大作を必死で創りあげた私・・・・。おバカでござんした。

取りあえず米ヒバが良いらしいとミキモトにお話ししましたところ
米ヒバを探して頂きそれでトルソーを創って頂くこととなりました。
特注トルソーです!うおおおお!

割れる恐れを防ぐために上にニスを塗ってもいいか?と聞かれたのですが、
ニスは塗ると木目の良さがなくなるので絶対に塗りたくない。、
しかし展示会中に割れて来ては困るので塗らない方が良いけれどとお応えしますと、
ニスの塗られた板と塗られていない板が家に届き簡単に截金と絵の具を
乗せてチェック。また先方に送り返して見て頂く。細かい何から何まで
スムーズにはいかないのが大企業様とのお仕事です。
誰もが問題に一人で決断できませんので一つ一つの工程のご解答に時間がかかる。
その度待ち時間が長く制作時間が一日一日短くなっていく・・・。
どこに当たるわけにも行かない。精神的なところの戦いです。
すると、漸く塗ってない方が断然綺麗とニスは塗らない方向で行くことになりました。
さすが目利きの一流ミキモト様!かーちゃんの血が騒ぐ瞬間です。

ドドーン。
ドデカイ段ボールが家に届き、開けてみるとそれは美しいトルソーでした。
トルソーのラインがとても綺麗!
また銘木師の助言もさすがで木目も大変美しく、美しいトルソーに美しい木目、
絵柄を描くのは難しいとは一切思わぬ、もう一発でイメージがバーーーーと降りて来てあとは
時間との闘いだけでした。

ミキモトの今回のコンセプトはフォーチューンジュエリー、クローバー。
クローバーを描いて欲しいと言われていたのと先に展示会用に配られていた
広告からのイメージ、こちら↓
s-IMG_2040

のイメージを崩さないよう描きました。
しかしここからは”かーちゃん”もメインの生活になったのです・・・。
なんと子供冬休み到来。どんなタイミングやねん。子供からしたら
私がミキモトをしてようが知ったこっちゃない。
そしてまたそりゃ私かって静かに一人で制作したい。むしろ
そうでないと創れない。当たり前にそう申しますが産んでしもたもんは
しゃーない。子供毎日家にいるしかない。一日、二日なら外で遊んできなさい、
お友達の家に行かしてもらってと言えますが、約二週間となるとそうは行かないのです。
朝ご飯食べさせて、ミキモト、昼食べさせてミキモト、朝九時から夕方五時までは制作。
日中近所の子供が入れ替わりで遊びに来ている中でミキモトでした。
旦那さまは?と思われましたか?私の旦那さま、年末年始が一年で一番お忙しく
これまたヘルプは一切無理。おいおいおい。(泣いている)
もうそれはそれは恐ろしい集中力ですよ。
子供が騒いでようが、もうこっちは必死です。
ふぅぅぅぅぅ。一人でしたら一日13時間くらい制作できそうなもんですが、
子供が居る中でやりますのでそこに制作する精神力をもってくる集中力は
半端ないです。夕方五時にはノックアウト。
来ている子供達に、「銭湯行くか?」
いくいくいくーーーーー!
かーちゃん車に子供ワンサカ乗せて銭湯へゴー。
寝て起きて截金、料理して截金、一休みして銭湯。

12月31日夜が来た。ミキモトが始まって以来
材料は切られて献立が決められ届く”ヨシケイ”とやらに
お世話になりました。お節もヨシケイ、詰めるだけ。

最近よう綺麗なお食事を並べてお仕事もバリバリなさっている
みたいな記事や雑誌を見ますが、私ほんまあれに文句言いたい。

「絶対嘘や!」

出来るかこのやろ~!。

あ、失礼。ウッカリ素が出てしまいました。
おほほほほほほ。

お正月、元旦だけはお休みしてまたミキモト。

ほんまもう、必死こいてやりました。
私のチンマイ作業部屋であっちに向かされこっちに向かされ
頑張ったトルソーちゃんは東京の花舞台に無事立つことが出来ました。
ゼロが何個付いてるか何回も数えないと分からない
高級パールベルトを身にまとい、ガラスケースに入れられての
お披露目。
頑張った甲斐あり、ミキモト様、お客様皆様、そしてこの花舞台を
支えるザ・ステージ新宿伊勢丹様からも
大変好評で終わることができました。

必死で創りますのに出来上がるものは穏やかなように思います。

過去半年にわたりかーちゃん口開けたら
ミキモトミキモトで、あまりにミキモトな生活だったため我が子にかーちゃんが
何をやっているか見せようと、保育園、学校を休ませ展示会初日、東京の会場に連れて行きました。
東京までえんやこらえんやこら。またド偉い大雪で送るはずの荷物が
届かないかもと。急遽鞄を変えて、子供山登りなみのデカイリュック背負わされ、
私海外でも行くのかえ?お着物入ったスーツガラガラ引っ張って新幹線到着。
息子の記念に新幹線前、ハイ、チーズ。
作家とかーちゃんホンマ目が廻ります。

初日、「え?お子様はどこに?」会場でミキモトお仕事様に聞かれます。
なんと銀座三越の時の個展以来ずっとお越しになって下さってるお客様が
子供を見てあげると言って下さりその方の家に子供は泊まらせて頂きました。
子供生まれて初めてかーちゃん抜きで知らない方の家に泊まりました。
応援して下さる方々に支えられての作家活動です。
私はというと、新宿伊勢丹から歩いて5分のホテルに一人優雅にお泊まり。
ひや~~~~~、極楽でしたわお一人様。神様からのお駄賃ですな。
朝早くからの搬入は高級ジュエリーを扱う現場、とても緊張感がありました。
貴重な体験です。
子供に展示会場を見せた次の日は三人でディズニーランドにも行って、
かーちゃんの怒涛のミキモト生活は幕を閉じたのでした。

本当に大変だった。
そして素晴らしい経験でした。
大きな賞を受賞したこともないこんな私をミキモトという大企業から
選んで頂けた運に感謝いたします。
今回のこのお仕事をさせて頂いて考えさえも変わりました。
もう大きなコンペの受賞いりません。有名な美術館、ギャラリーなどで
個展をしたいと思っていた夢もどこかに行ってしまいました。
自分の腕は確かなのです。そうでないと絶対に選んで頂けなかったから。
自分に自信を持てたことで方向性が変わりました。
これからは表に出ることよりも、
世の中に評価して頂ける作品を残していけるよう
精進して参りたいと思います。
暫くは皆様にお目にかかれないかもしれません。
だけれど40代、少し子育ても落ち着いて参りました。
更に腕に磨きをかけて、
黙々と静かに作品創りに励んでいきたいと思います。
活動の色々はご縁と運命に任せて。
人間としての”心”を大事に生きていきたいと思います。
そこには反省も多々あるけれど・・・。
未熟な私ですがどうか宜しくお願い致します。

そしてこんなに長い文を読んで下さるいつも会場に来て下さる方々の
応援があるからやれる力が湧きます。

皆様本当にいつもありがとう!!!!!!

                 長いな!     

会場写真は会期中一切の写真が許されませんので
百貨店オープン前の暗い中のみ撮影でした。
慌ただしくまた緊迫感の絶えない中カメラマンさんが
ジュエリーの搬入の邪魔にならぬよう撮影して下さりました。
身が引き締まる思い、生唾をのんでオープンほんの少し前の風景です。

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                                 感謝    安川 幸聖理